[熱中症対策] 塩あめやスポーツ飲料より重要なもの【管理栄養士:小山浩子】
厳しい暑さが続いているが、同じ環境にいても「熱中症になりやすい人」と「なりにくい人」がいるという。
●
熱中症になりやすい人と なりにくい人
熱中症にならないために、どんな対策をしているだろうか。
「毎日塩あめをなめています」「スポーツ飲料を飲んでいます」など自身で対策をしていることだろう。
ただ、その対策には自己流であることがほとんど。ただ夏は汗をかくから「糖分」と「塩分」が足りないと思い込み、
過剰摂取している人も少なくないとの指摘も・・・。
今回、熱中症になりやすい人の特徴から、その対策のために必要な栄養素と量を管理栄養士の立場から伝えていきたい。
●
なぜ熱中症になるのか。
夏は気温や室温、そして湿度が高くなる。高温多湿の環境では末梢血管を大きく広げて血液をたくさん流したり、発汗させたりして、
体の表面から空気中に熱を放散させて、適正体温を保たなければならない。
けれども皮膚に集まった血液の流れが滞り、体温調節機能がうまく働かなくなると、めまいや頭痛、吐き気、体のだるさなどの
健康障害が起きる、これが「熱中症」。
だが、同じ環境にいても「熱中症になりやすい人」と「なりにくい人」がいるのも事実。
●
熱中症になりやすいのは 「子ども」「高齢者」「肥満の人」だといわれる
最もリスクが高いのは、「子ども」。子どもは大人に比べると体温調節機能が未熟なため、どうしても熱中症になりやすい。
次に「高齢者」。熱中症の予防には筋肉量を増やすことが重要なのですが、年とともに筋肉量が減少するので、
一般的に高齢者は熱中症発症リスクが高いといえる。
どうして筋肉量が重要かというと、筋肉には体内の“水分貯蔵庫”の役割があるからだ。
気温が高いと汗をかき、一時的に脱水症状になって、臓器に血液を送れなくなったり、体温調節機能が働かなくなったりする。
そのような非常時に、筋肉から水分を血液に送り込むことができるわけだ。
さらに「肥満の人」も、熱中症発症のリスクが高いといわれる。筋肉は水分貯蔵庫と前述したが、
脂肪は熱をこもりやすくする特性があるため、肥満の人は体温を下げづらいわけだ。
●
熱中症になりやすい 二つの生活習慣
一つは、朝ごはんを食べない人。朝ごはんを食べないことで一日の栄養素が圧倒的に不足する。昼や夜にまとめて食べればいいわけではない。
光を浴びて朝食を取ることで、その日の体内時計がスタートし、体温が上昇するリズムも整いやすくなる。
「体温が上がらなければ熱中症にならなくていいじゃないか」と思うかもしれないが、それも間違い。体内時計がしっかり働くことで、
体温調整機能を含め、体は外部の環境に応じて体内をうまく変化させることができるのだ。
もう一つ、「甘いものをたくさん食べている人」も注意が必要。
疲労回復の栄養素、ビタミンB1は甘いもの(糖質)の代謝にも必要で、さらに夏は汗からも排出される。
そのため、甘いものを摂りすぎてビタミンB1が欠乏すると疲れやすく、エネルギー代謝もうまくいかなくなって熱中症のリスクが上がってしまう。
以上の“リスクが高い人”を踏まえた上で、熱中症を予防するために、何をどれくらい取ればいいかをまとめてみよう。
●
「夏は塩分不足になる」というが 普通の食事で不足することはない
夏は汗で水溶性ビタミン(ビタミンB群、ビタミンC)とともに、水溶性ミネラル(ナトリウム、カリウム、カルシウム)が排出されやすく、
中でもナトリウムとカリウムが体温調節機能に重要な役割を果たしている。
よく耳にする"ナトリウム"は、細胞の浸透圧(細胞の内外の水分や成分の濃度を調整する機能)を一定に保っている。
食塩の主成分なので、塩分として摂取したものがカウントされる。よく“夏は塩分が足りなくなる”ということが言われるので、
塩あめや梅干しを頻繁に口にするかもしれないが、「一日に必要なナトリウム(塩)の量」はどれくらいか。
命をつなぐための一日に必要なナトリウム量は、なんと600mg。食塩に換算すると、たったの1.5g。
みそ汁1杯で約2g、しょうゆ小さじ1杯で1gなので、まず普通の食事で不足することはない。
日本人の一日の食塩摂取量は平均10gで、すべての年齢層で過剰摂取といわれているくらいなので、ナトリウムはよほど暑い環境で、
いつも以上に汗をかいたという状況でなければ、基本的に足りている量だ。
●
不足しがちなカリウムの補給に おすすめはバナナが手軽
一方、ナトリウムとともに細胞内の浸透圧を維持している「カリウム」は足りていない傾向にある。
カリウムは細胞の内側に多く含まれているが、夏に汗などで体外に排出されてしまうと細胞内が脱水状態を引き起こし、夏バテになってしまう。
カリウムは筋肉でエネルギーが作られるのを助けているので、不足すると筋肉の収縮がスムーズにできず、夜中に足がつることも……。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、生活習慣病の予防を目的とした成人1人一日当たりのカリウム摂取の目標量を男性3000mg以上、
女性2600mg以上としている。
これがどれくらいの量かというと、キュウリ1本(100g)で200mgの量しかとれない。毎日朝のサラダでキュウリを1本は食べているから大丈夫?。
それでは目標量の10分の1にもならない。
今の時期ならキウイ、トマト、スイカなど、汗で失われるカリウムや水溶性ビタミンが豊富なので、積極的に摂取するといい。
おすすめはバナナ。バナナ1本で500mg近くのカリウムが含まれ、脳と筋肉のエネルギー源である糖分も含まれている。
●
熱中症対策には 「朝ごはん」が何より大切
体温調節に欠かせない栄養素がもう一つ、それがマグネシウム。骨の構成成分であるだけでなく、神経の機能やエネルギー代謝に関わり、
体温や血圧を調節するといった働きがあるのだが、カリウムと同様に日本人は不足傾向だ。
性別・年代ごとに推奨される量は異なるが、およそ一日300mgを目安にするといい。
マグネシウムは大豆製品に多く含まれていて、納豆なら1パックで50mg、木綿豆腐なら1丁で約200mg摂れる。玄米ごはんでもいい。
◎こうしてみてみると熱中症対策として、市販の塩あめやスポーツ飲料などでわざわざナトリウムや糖分を補給しなくても、
3食の食事で間に合うということがわかる。
特に寝ている間にナトリウムだけでなく、カリウム、マグネシウム、糖質も消費されているので、「朝ごはん」が何より大切なので、抜かないように・・・。
(^_^)「水分補給(1)(2)」も参考に