選手の思うメンタルの強さとは [1]
 対人競技であるバドミントンには、ネットの向こう側にいる相手だけではなく、自分自身との戦いにも勝たなければならない。
そこで大事になってくるのが「メンタル」の強さだ。勝ち負けが決まる重要な場面、絶対にポイントを取られてはいけない場面などで、どれだけ 自分の力を発揮できるか、つまり「勝負強さ」というものだ。
 ここではトップ選手たちの試合に取り組む姿勢や試合中のメンタルについて紹介していこう。

§1.選手が考える「メンタルの強さ」とは?
●権藤公平:ジェイテクト所属
 自分なりに考えると、競った場面などで弱気にならすずに、しっかりと普段通りのプレーができるかどうかだと思う。そうした場面で気持ちが引いてしまったり、 積極的なプレーができないといった状態に成ってしまうのはメンタルが弱いのではないかなと思う。メンタルが強い選手は、 ゲーム練習をしているときから、競った場面を練習としてとらえるのではなく、本番を想定している。そうすることで、いざというときに集中力などに違いが出てくる のだと思う。
●小野菜保:再春館製薬所所属
 私なりには「切替の早さ」だと思う。試合中だけではなく、練習の中でミスしたときにも引きずらない。 その場その場で瞬時に決められる決断の早さに つながるのかもしれません・・・
●大家夏稀:NTT東日本所属
 相手に点差を離されて苦しい場面になっても、さいごまで諦めない気持ちこそがメンタルの強さだと思う。印象深いのは2016年リオ五輪の女子ダブルスの決勝戦。 高橋礼華/松友美佐紀ペアが逆転した試合で、五輪の決勝で、しかもファイナルゲーム16−19からの逆転。すごいプレッシャーをはねのけるメンタルの強さが 出ていると思う。あきらめない姿勢を結果につなげる人がメンタルの強い選手といえるのではないだろうか。

§2.メンタルを強くするポイント
●権藤公平:いいプレーができたときに、なぜうまくいったのかを考える
 自分が社会人2・3年目までは、トナミ運輸という強豪チームにいたことから、負けてはダメだとか、早く日本代表に入らなければと言う思いが強く、 プレッシャーになっていたが、混合複で準優勝した16年の全日本総合では、勝ち負けではなくて練習した成果を出すことを第一に考えていた。 そのことが結果につながったことで、その後は緊張して試合で何もできないということはなくなった。
 「なんでビビリながら試合をしなければ行けないんだろう」という気持ちが自分の意識を変えたと思う。試合をしていても楽しくない、だから、「力一杯練習して きたことをやろう」それだけを考えていた。
 大学の心理学の先生の「いいプレーができたときに、なぜ良かったのかを考える」という言葉も印象に残っている。試合後に悪かったところを ことも振り返る人は多いと思うけれど、調子がいい時って特に考えていなくても上手くできているハズ。その無意識の部分をあえて考えることで、調子が悪い時でも いいイメージを重ねられるようにしている。
1本ミスしたら「なんでこんなミスをしたのだろう」と考えてしまい、悪循環になっていたのが、メンタルを少しでもコントロールできるようになって、 調子が悪くても悪いなりのプレーができるようになり、波が少なくなったと思う。
●小野菜保:結果を求めることをやめて、力を出し切ることを考える
 団体戦の勝負所で回ってきたり、個人戦でもコートに入ったりしたときに緊張しして、"負けたらどうしよう"という気持ちが強くなってしまう。 今まで練習してきたことを出そうという気持ちより先に結果を求めてしまう、自分はメンタルが弱いと自覚している。
 そんな中で「心が強い人のシンプルな法則」(きずな出版)という本を読んだ時に、本に書かれていた"メンタルが弱い人の特徴"が、 まさに自分に当てはまっていたのに気づかされた。
第三者からの見え方を気にする、周りから言われたことを100%受け止めてしまうことなどが指摘されていた。まさに自分がそうで、相手からこう思われるのではないか と想定して動いていて、それが「負けたらどうしよう」につながっていたのかもしれない。」。
今は、結果を求めることを一度やめて、自分のできることをやることにしている。その結果として負けたのであれば仕方ない、 と割り切るようにしている。チームの先輩やスタッフにいろいろ意見を聞く中で、自分の中で響いたのは「勝ち負けとかいいから楽しもう」と言ってもらえたことだ・・・。
●大家夏稀:練習と生活の中でいかに意識できるか
 今年に入って気持ちを強くすることを意識的に取り組むようにしている。
その一つが「練習との向き合い方」。練習と聞くと、試合で勝つために必要な技術や体力を高めることに目が行きがちだ。けれども実際にはメンタルを鍛えることも 含まれているので、練習を頑張れば自信となり、試合の大事な場面でで発揮される。
そして、その自信を大きくするのが一日一日の練習を悔いなくやりきること。「毎日の積み重ね」とよく言われるが、実際に高い意識で日々の練習に取り組んでいる選手は メンタルが強くなる。
 また、練習以外の時に、長い時間ではなくても、生活の中でバドミントンの時間を取り入れることで意識やメンタルを変えるきっかけもあるハズ。 試合動画を見たり、攻撃シーンを集めたものを見たり、長いラリーのシーンを見たり、勉強の合間にちょっと息抜きしてもいいかも[この行は大家選手の言葉ではありません]・・・。
 メンタルが強くならない選手は途中であきらめることが多い。自分で決めたことを簡単にあきらめると、試合で勝つための自信につながらない。 最初は上手くできなくても大丈夫。「コレができればレベルアップするぞ!」とプラス思考で毎日の練習に取り組もう。

(^O^)試合は、日常にはない緊張(スリル)を味わえるので、勝ち負けだけではなく勝負を楽しむという視点ももってバドミントンの魅力を感じよう!

▽「ケース別の心構え」に続く

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