心を強くするヒント [1]
 対人競技であるバドミントンには、ネットの向こう側にいる相手だけではなく、自分自身との戦いにも勝たなければならない。
そこで大事になってくるのが「メンタル」の強さだ。勝ち負けが決まる重要な場面、絶対にポイントを取られてはいけない場面などで、どれだけ 自分の力を発揮できるか、つまり「勝負強さ」というものだ。

●今井紀夫:日本協会専任コーチングディレクターのメンタル論
§1.勝負所で勝てない選手の特徴は・・・ 「勝負やスコアに意識が向いて、勝つための判断・分析ができない」のではないか。
 メンタルが弱いといわれる選手は、大事な場面でのミスが目立ったり、大会でもなかなか勝ち進めないことが多いのではないか。 そういった選手の傾向を見ると、競った場面での状況判断が出来ていないためだ。頑張ろうという気持ちはあっても、その状況に適した戦術や対応を考えないまま ラリーをしてしまいがち。ポイントを取ることよりも、「あと1点取られたら負けだ・・・」「さっきのプッシュが入っていれば・・・」など、別の意識が強くなってしまっていることが多い。
 メンタルが強い選手は、どんな状況でも勝利に必要な戦術や作戦を考える。追い込まれていても、「このままだと負けてしまう」と 考えるのではなく、「どうすれば逆転できるか」という発想が先にくる。つまり、頭の中で逆転勝ちするシナリオを描くことができるわけだ。
すべてが結果につながるわけではないが、両者のメンタルの差は十分理解できるだろう。
 試合の際、コーチからのアドバイスを理解しているか、していないかでもメンタルの強い、弱いがわかる。アドバイスと自分の置かれた状況を踏まえて、 勝つために必要なプレー・戦術を使えるかどうかが、勝負強さにつながっていくものだ。
 アドバイスが頭に残らなければ、インターバル後のプレーでも的確な判断を欠き、悪い流れを断ち切れないままゲームを続けることになる。 試合後も、アドバイスの内容や試合の展開を覚えていないことが多いのではないか。焦りや緊張があったのかもしれないが、勝つためのアドバイスが冷静に受け止められない 状況では、大事な場面で勝つのは難しいだろう。
 逆に気分が乗らないときは、口からハッハッと短く吸う胸式呼吸を行うと心拍数が上がり、テンションも上がる。
[強化メモ]・メンタルが弱い選手は競った場面で状況判断ができない・強い選手は常に勝利をイメージしている・監督やコーチのアドバイスの 受け取り方に違いが出る

§2.勝負強い選手の意識と行動・・・ メンタルが強い選手は、まわりにも好影響を生み出す。
 「本番と同じように練習しよう」 よく使われる言葉だが、分かっているけど、なかなかできないのが実態。
ただ、現在の日本代表の選手たちは、アップの時も、コート内の練習でも日頃から勝負することを怠らない。このことが現在の代表が国際大会で活躍できている、 勝負所で勝てる選手が増えていることにつながっている。そういった良い空気感を生み出しているのが男子複の嘉村選手(トナミ運輸)。 まわりを巻き込みながら緊張感のある雰囲気を作るのがとてもうまい、とのことだ。単に厳しさや強制力からくるものではなく、ポジティブにみんなの上昇志向につながるもので、 プラスαの意識を持って取り組んでいる。
 メンタルの強さは、多少なりとも性格が関係してくる。
 どれが良い、悪いではなく、優しい性格よりガツガツして前に出てくる方が強いし、自分の考えや意志をしっかり伝えられる選手は、大事な場面で冷静な状況判断ができるし、 迷わずに行動できる傾向がある。
 当然、勝負事なので、相手に嫌がられても勝ちにこだわる姿勢、人に流されない図太さなどがある人も、大事な場面で勝てる選手ということがいえる。
[強化メモ]・日頃から勝ち負けを意識する「日本代表」を見習う・練習の中にプラスαを作ることが大事・自分の考えを伝えようとする性格がメンタルに 直結


[心が強くなるヒント]
メンタル力はアップする・・・勝ち負けを経験しながら「勝ち方」も分かってくる。負けが続いていても、「メンタルが強くなるための 経験値」という考えを持ち続ける。む前のプレーで高まった興奮状態をニュートラルの状態に戻す。ラケットを握り直して筋肉を緩め、ストリングを見つめるなどのアイ・コントロール をしながら深呼吸を数回行う。
常に"自分"を持ち続ける強さ・・・苦しい場面になっても、どうやってポイントを取りにいくかを考えながらプレーする。 練習でも、自分のテーマを持って取り組み、自分のバドミントンに対するポリシーを培っていこう!

(^O^)試合は、日常にはない緊張(スリル)を味わえるので、勝ち負けだけではなく勝負を楽しむという視点ももってバドミントンの魅力を感じよう!

▽古財和輝のメンタル論に続く

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