バドの技術と戦術の変化に迫る[女子ダブルス編]
スポーツの技術や戦術などは、その時代のトップ選手のプレースタイルや道具の進化、論理的なトレーニングの普及などによってどんどん変わっていく。
今回は女子ダブルス...
現在の日本代表は、世界ランクでも上位に入る選手がいて、国際大会でも好成績を残している。2016年リオ五輪では、高橋礼華/松友美佐紀が金メダルを獲得している。
●[1990年代後半~2000年代] 中国が圧倒していた時代...。世界ランクで上位に入る中国選手や、そのライバルだった韓国選手は170㎝の
高身長の選手が多く、その体格やパワーを生かした攻撃を仕掛けてくるので、レシーブする側は一苦労だった。
1990年代は葛菲/顧俊(中国)、鄭素英/吉永雅や羅景民/張恵玉らの韓国勢が活躍していたが、2000年代になると、女子ダブルスの世界タイトルはほとんど中国が獲得している。
07年アテネ五輪では揚維/張潔雯、高峻/黄穂が金、銀メダルを獲得。地元開催の08北京大会では、杜婧/於洋が金、魏軼力/張亜雯が銅メダルを獲得している。
これに追随していたのが韓国や台湾。たまに日本、マレーシア、インドネシアのペアが上位に入るというのが世界の勢力図だった。
こうした中で、ライバルとして奮闘していたのが韓国の羅景民、女子ダブルスのみならず、混合ダブルスでも活躍していた。プレーは中国同様、総合力の高い選手で、
試合の流れを冷静に見極めながら攻撃を仕掛けていくタイプだった。
●[2010年代] 12年ロンドン五輪で中国の趙蕓蕾/田卿が金メダル。この頃のプレースタイルは大きな展開がまだ多かったが、
杜婧/於洋などがドライブや速いレシーブを使うようになり、スピーディーな展開も目立つようになってきた。前衛・光栄の役割分担の中で、レシーブから
積極的に縦の動きを入れるペアがポイントを取るようになり、低い展開のラリーが増え始めた。男子ダブルスがノーロブが主流で、女子ダブルスも同様の戦術をとる
ペアがでてきた。
日本のタカマツ(高橋礼華/松友美佐紀)は、ロンドン五輪には出場できなかったが、フジガキ(藤井瑞希/垣岩令佳)が銀メダルを手にしたことで、日本人ペアも
「自分たちもやればできる」とメキメキ成長し、タカマツはスーパーシリーズで初優勝を飾り、その後 日本ペアは初の世界ランキング1位に輝いた。
タカマツのダブルスは松友が前衛、高橋が後衛とはっきりした役割があり、他のペアとは比較できない強みを持っていた。松友の前衛力(前に出るタイミング、コースの読み、
シャトルの触り方)など予測する力が卓越していた。高橋は、高い総合力とバランスの取れた選手で、体幹の安定性に優れていた。自由に動く松友に対して、
普通はついていけそうにない中でも落ち着いて幅広くカバーしていたのはその証拠である。
●[2010年代後半] リオ五輪から東京五輪、そして現在にかけては日本、中国、韓国が女子ダブルスの上位を占めている。
ここにタイ、マレーシア、インドネシアなどが入ってくる状況で、しばらくは上位3カ国が国際大会を引っ張っていくのでは(期待もこめて)。
プレースタイルは、レシーブを上げない低い展開が主流になっていて、相手のスマッシュに対してドライブ気味に返して、攻撃の糸口を作ろうとするディフェンスが
多くなってきた。これによってラリーのスピードが速くなり、そのスピードに合わせて対応する選手が増えてきている。ラケットの出し方、反応の速さ、判断力が要求される。
デンマークのリターユール/ベデルセン、陳清晨/賈一凡(中国)らとともに福島由紀/廣田彩花や松本麻佑/永原和可那らも頭角を顕してきた。
最近目立ってきているのが志田千陽/松山奈未。スマッシュがすごく速いというわけではないが、動きとタッチの速さ、後衛(志田)の緩急をつけたスマッシュ、前衛を
得意とする松山のコンビネーションで さらなる飛躍が期待できる。
●[今後はロングサービスの使い方] 現在の女子ダブルスは、スピードと空間の両方を使えるペアが安定した成績を残しているが、
代表的なのが福島由紀/廣田彩花。速い展開にも対応できるディフェンス力とともに、クリアーやロブなどの空間もうまく使う。
また、最近の女子ダブルスではロングサービスを多用する選手も増えてきた。3年前のサービスに関するルール改定の影響だと思われるが、サービスの制限が変わったことで、
中国や韓国が積極的に意表をつくピンサービスで仕掛けてくるようになってきた。
女子ダブルスでは、このロングサービスの使い方が今後の結果につながっていくのではないか[元日本代表:小椋久美子]
日本では、「ダブルスはショートサービス」と学んできた選手がほとんどで、ロングの対応にそこまで慣れていない。今年5月のユーバー杯での戦いで、日本選手は
ロングサービスをあまり使わないが、中国や韓国は大事な場面でもねらってきた。戸惑いながらレシーブ対応していた日本選手の印象だ。
自分たちがロングサービスをつかうかどうかは別として、少なくともロングサービスのレシーブ対策は、今後必要になってくるだろう。
トップ選手のプレースタイルの変化は、順次、下のカテゴリーに浸透していくので、ジュニア選手や中高生などもロングサービス対応の練習を取り入れ、プレーの幅を
広げて行きたいものだ。特にダブルスのサービス周りは勝ち負けに直結するので、対応力をしっかり身につけておこう。
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