☆ラケットの変遷と桃田賢斗の変化
 東京五輪では金メダルを期待されながら不本意な結果に終わった桃田賢斗選手。だが、長きにわたってランキング世界一を続けていることから、 再び輝きを放くことを期待したいものだ。
 ここではラケットに関する話題を桃田選手にからめて紹介していく...。
バドミントンを始めて、自分の好みややりたいプレーが少しずつ分かってきた頃、2本目、3本目のラケットを求める人も多い。 また、トップ選手にあこがれてハイエンドのものを使ってみたくなる気にもなってくる。
トップ選手ともなればどんなラケットでも使いこなすことはできるだろう。しかし、自身のベストパフォーマンスを表現するためには自分の武器を知り、 それを最大限発揮させる必要がある。桃田選手がランキングトップに上っていく過程で、その武器であるラケットに何を求めたのか、ヨネックスの開発担当者のコメントとともに 記事を紹介してみよう。何かの参考や話題になるやも....。
★シングルスとダブルスで使い分けた高校時代
 桃田選手が存在をアピールした第一歩が2012年の世界ジュニア選手権(千葉県で開催)。このとき桃田が使用していたのが「アークセイバーZ-スラッシュ」。鮮やかなイエローで、 日本代表クラスも使用していた上級者向けラケットだ。このラケットは2009年にリリースされ、翌年にタン・ブルホン(マレーシア)が時速421キロの世界最速を記録し、 ギネス世界記録に認定されて話題なった。フレームが小さく、スマッシュのスイング時の空気抵抗を抑えることで振り抜きを追求。上級者だから使いこなせるラケットだった。
 ただ、このアークセイバーZ-スラッシュ」は桃田が後に好んで使っていく「アストロクス99」の系譜とは同列ではない。おそらくは憧れていた田児賢一(当時NTT東京)と 同じものを使いたかったのだろう。
 興味深いのは、桃田は当時ダブルスでは「ボルトリック80」を使っていた(ダブルスのパートナーは松居圭一郎)。「アークセイバーZ-スラッシュ」がイーブンバランスのバランス設計に対して、 「ボルトリック80」はラケットヘッドが重い設計になっている。シングルスよりも、より攻撃力を重視したラケットヘッドラケットを選んでいたのだろう。
★デザインより性能重視に(NTT東日本入社後)
 入社後も「アークセイバーZ-スラッシュ」を使っていたが、1年目の秋からは「ボルトリックZ-フォース」を使っていく。その後継の「ボルトリックZ-フォースU」で、 2015年インドネシアOP優勝、世界選手権シングルスで初の銅メダル、全日本総合優勝、年末のスーパーシリーズ・ファイナルを制覇と飛躍していった。
高校時代はデザインや憧れでラケットを選んでいる雰囲気だったのが、社会人となり世界で戦っていくのに小手先では勝てないと感じたのではないか?。スマッシュを重視して ヘッドが重いラケットを求めていたときに、性能で選んだのが「ボルトリックZ-フォース」だったようだ。
★出場停止期間後
 1年以上の競技会出場停止期間の後、復帰したときに使用したのが「デュオラZ-ストライク」。デュオラシリーズの最上位機種で表裏異形状にすることでフォアハンドと バックハンドにそれぞれに特化した性能を引き出す画期的なものだった。が、復帰戦でのプレーはうまくこのラケットをコントロールできていなかった感があると開発担当者が語っている。デュオラはシャフトのしなりではなく、面の弾きでシャトルを飛ばすラケットだっことに加えて重量配分もイーブンバランスだった。
2017年の海外遠征で、打ち分けの精度やパワーを求める中で「デュオラZ-ストライク」から「アストロクス88D」に変え、連勝を続けていった。その後継の「アストロクス99」で2018年の世界選手権(南京)で世界一に。桃田の求める性能を最大限に盛り込んで作られた「アストロクス99」は、スイング時の回転力が高まり、ショットの威力が増すのを売りとしたラケット。新素材Namdをシャフト・フレームに採用し、球持ちと球の出の良さを追求したものだ。
★そして現在
 現在、桃田が使用しているのは従来品とはコスメ違いの「アストロクス99」。もともとは桃田の大好きなオレンジをベースにしたデザインだったが、2020年から 東京五輪のテーマカラーのネイビーに、金メダルのゴールドをあしらったデザインの桃田だけが使用するプレミアムなラケットだ。
 桃田選手が好むラケットは「ヘッドが効く」ラケットだと言う。ロビングのように下から打つショットでも、スマッシュのように上から打つショットでも、 「ヘッドが効く」というのがポイントだ。「つまり、ヘッドヘビーで球持ちがいいというのが彼にとっていいラケットなのだ」と開発担当者が語った。

※自分に合ったラケット選びで初級・中・上級の判断は難しいが、「追い込まれた場面でクリアーがしっかり飛ぶか、飛ばないか」を参考に・・・

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