●「情動知能」とは
バドミントンの場面で考えてみると、「緊張していることを自覚する」「パートが落ち込んでいる様子を察する」「焦ったままではいけないので、
気持ちを切り替える」といった力が、「情動知能」に含まれる。
・情動の知覚・・・自分や他者の感情を、表情、声、行動などから感じ取り、表現する能力。
・情動の利用・・・感情を思考や判断に役立てる能力
・情動の理解・・・「感情がなぜ起こり、どう変化し、何を意味するのか」を理解する能力
・情動の管理・・・自分や他者の感情とうまく付き合い、望ましい状態へ整えていく能力
など、複数の要素によって「情動知能」から成り立っている。
●バドミントンは感情に左右されやすい競技
現スコアリングシステムでは、ラリー毎に得点と失点が繰り返される競技である。一つ一つのプレー結果に対して、焦りや不安、
怒りや喜びといった情動の変化が生じやすいと考えられる。
例えば、連続失点で焦りが生ずると、本来なら使うはずのない無理な強打を選択してしまったり、相手に流れが傾いた状況では、
普段より消極的な配球になってしまうこともある。
団体戦のダブルスで敗戦した後、勝負のかかるシングルスで気持ちを切り替えるのも容易ではない。
また、15点3ゲーム制では、1点の重みが増し、選手にとって情動のコントロールを今まで以上に必要になるものと思われる。
●強い選手は「自分の状態」に気づいている?
これは、前述の「情動の知覚]にあたるもので、強い選手は「自分の情動の変化を敏感にキャッチ」しているのだろう。
逆に、周囲から見ると「焦っているなぁ」と感じる場面でも、本人はその変化に気づいていないことがある。
実際に、試合中には、応援や声掛けで「落ち着いて!」という言葉を耳にすることがある。
これは、本人が自分の情動の変化にまだ気づいていない状態にもかかわらず、周囲からは明らかに焦っているように見えているときに起こっていそうだ。
他競技[ウルトラマラソンランナー]の先行研究では、情動知能が高いランナーほど、快感情(幸福感、落ち着き)が高く、不快感情(怒り、混乱、抑うつ、疲労、緊張)が低かったことが
報告されている。
つまり、「強い選手」は、自分の情動の変化に敏感に気づき、さらにその状態をポジティブにとらえている可能性が示唆されている。
試合で崩れない選手−−情動知能が、競技力と関係している−−具体的な実戦方法や、他の「情動知能」を構成する要素を後編で考察していこう。
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