試合で崩れない選手とは!
 バドミントンの試合では、技術や戦術だけでは説明できない「流れ」や「雰囲気」が試合結果に大きく影響する。
試合で強い選手、簡単に崩れずに 最後に勝利をつかむ選手には、この「流れ」を察知し、コントロールする力があるように見える。
 では、この「流れ」や「雰囲気」とは、いったい何なのだろうか。近年、スポーツ心理学領域では、「情動知能」と競技パフォーマンス との関連が注目されている。
 今回、「情動知能」から考える感情コントロールの理論と実践について、活用方法を交えて見ていこう。

●強くなるためには、体力や技能だけでいいのか?
 「強くなるための方法」と聞かれたら、真っ先に思い浮かべるのは、体力トレーニングや技術練習などだろう。
もちろん、それらは競技力向上に欠かすことのできない、重要な要素であることには間違いはない。そんな中で、「強くなるためには 本当に体力や技能だけで十分なのか?」と、問いかけしてみよう。
 「劣勢になるとイライラする」「パートナーのミスに怒ってしまう」といった感情のコントロールの苦手な選手がいたり、 「普段通りにやっていれば勝てるのに、なにをイライラしてるのか」「互角に勝負していたのに、なんでそこで気持ちが崩れてしまうのか」といった 場面は、関わる多くの人が経験していることだろう。
 今回、こうした試合中に生じる怒り、不安、焦り、喜びなどをを含めて、「情動」という言葉のくくりで整理してみよう。
繰り返して述べておくと、体力や技能は競技力を支える土台である。その上で、試合で力を発揮するには、情動とどう向き合えばよいか、 考えで見よう。

●「情動知能」とは
 バドミントンの場面で考えてみると、「緊張していることを自覚する」「パートが落ち込んでいる様子を察する」「焦ったままではいけないので、 気持ちを切り替える」といった力が、「情動知能」に含まれる。
・情動の知覚・・・自分や他者の感情を、表情、声、行動などから感じ取り、表現する能力。
・情動の利用・・・感情を思考や判断に役立てる能力
・情動の理解・・・「感情がなぜ起こり、どう変化し、何を意味するのか」を理解する能力
・情動の管理・・・自分や他者の感情とうまく付き合い、望ましい状態へ整えていく能力
など、複数の要素によって「情動知能」から成り立っている。

●バドミントンは感情に左右されやすい競技 
 現スコアリングシステムでは、ラリー毎に得点と失点が繰り返される競技である。一つ一つのプレー結果に対して、焦りや不安、 怒りや喜びといった情動の変化が生じやすいと考えられる。
 例えば、連続失点で焦りが生ずると、本来なら使うはずのない無理な強打を選択してしまったり、相手に流れが傾いた状況では、 普段より消極的な配球になってしまうこともある。
 団体戦のダブルスで敗戦した後、勝負のかかるシングルスで気持ちを切り替えるのも容易ではない。
また、15点3ゲーム制では、1点の重みが増し、選手にとって情動のコントロールを今まで以上に必要になるものと思われる。

●強い選手は「自分の状態」に気づいている?
 これは、前述の「情動の知覚]にあたるもので、強い選手は「自分の情動の変化を敏感にキャッチ」しているのだろう。
逆に、周囲から見ると「焦っているなぁ」と感じる場面でも、本人はその変化に気づいていないことがある。
 実際に、試合中には、応援や声掛けで「落ち着いて!」という言葉を耳にすることがある。
これは、本人が自分の情動の変化にまだ気づいていない状態にもかかわらず、周囲からは明らかに焦っているように見えているときに起こっていそうだ。
 他競技[ウルトラマラソンランナー]の先行研究では、情動知能が高いランナーほど、快感情(幸福感、落ち着き)が高く、不快感情(怒り、混乱、抑うつ、疲労、緊張)が低かったことが 報告されている。
 つまり、「強い選手」は、自分の情動の変化に敏感に気づき、さらにその状態をポジティブにとらえている可能性が示唆されている。
試合で崩れない選手−−情動知能が、競技力と関係している−−具体的な実戦方法や、他の「情動知能」を構成する要素を後編で考察していこう。

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▽具体的な実戦方法に続く
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