フィジカルにもメンタルにも効く?ヨガの効果と実践
 練習試合の機会も減り、他と接触したり、競い合うような激しい練習も制限される中で、運動不足解消とメンタルヘルスへのヨガが話題となっている。 専修大学スポーツ研究所のスポーツ心理学(佐藤雅幸)・臨床心理学(角田真紀子)両教授やヨガ・インストラクター(露木めぐみ)が紹介する 「ヨガが心身にもたらす効果や競技力向上のための活用法、ヨガを取り入れたエクササイズ」を見ていこう。

●継続することで"気づき"に
 長い時間やればいいというわけではなく、1日5分でも3分でも、自分がゴールしやすい設定を作って続ける。
毎日続けることで、「今日は呼吸が気持ちよかった」 「今日は落ち着いてできた」など気づき、心身を客観的に判断できる要素が出てくるという。
 ヨガというと独特のポーズなどが思い浮かぶが、「ポーズをうまく行うことが最終ゴールではなく、その中で、どんなことが感じられたかが大事」とのこと。
●自分の体の状態に気付きやすくなる
 例えば、世界で活躍するトップアスリートには、瞑想などを取り入れた「マインドフルネス」という、思考や感情、身体感覚を理解するために意識をコントロールする訓練を 取り入れたりしている。目を閉じ、体、手の位置、筋肉の動きなどに意識を向けて自分の体を観察する。バドミントンなど対戦相手や外的要因によって求められるスキルが 左右される競技は、「相手を見て、相手に合わせ、相手のどこをねらうかなど常に外側に意識を向けてプレーしているため、自分の体の中に意識を向けることがおろそかになりがちだ。 そのため、自分の意識と実際の体の動きにズレが生じても気付きにくい。普段から、自分の体の中に意識を向ける訓練をすることで、自分の体の状態に気付きやすくなり、ケガの予防や競技力向上に役立つ。【スポーツ心理学(佐藤雅幸)】

 ヨガは我々が生活する上で必要となる、今の自分自身の感情を把握したり、感情を受け入れる、自覚的に行動するなど、自己観察が大切になる。そういう意味では 「マインドフルネス」と同じ要素がある。自分の体の感覚、位置を観察し、把握しておくことは非常に大事で、アスリートが「ここの筋肉を使っている」「ここが伸びている」という 感覚が、実際に動いている筋肉とズレていることがあるそうだ。また、ケガや痛みに関しても同様で、「痛い場所がぼんやりしている」など、実際の故障箇所と痛みがズレている こともある。
 自分の体の位置感覚が鈍くなると、普通の人でもぶつけやすい、転びやすいなどにつながるし、スポーツ選手であれば、球が取りづらい、思ったようにラケットに当たらないなど、 パフォーマンスに影響を及ぼす。まずは、後述(後編)のボディスキャンから取り入れて実践してみよう。【インストラクター(露木めぐみ)】

 普段の生活も毎日毎日やっているとオートマチックになって、意識せずにやっていることも多い。食事などもそんなに意識せずに食べて、味が分からないというときでも、 しっかり噛みしめて、味わって食べることで栄養の吸収も変わってくる。それと同様に、運動や練習もオートマチックになってしまうと、あまり効果が上がらない。 体や目的を意識することで、練習の成果を上げることもできる。
 また、練習でなかなかうまくいかないのは体が少し傾いているから、ということも多いし、体が傾いたまま練習を続ければケガにつながることもある。体を少し矯正しただけで 今まで入らなかったショットが入る場合もあるし...つい、目新しい練習に目が行きがちだが、急がば回れで、基本に戻って自分の体を意識することがいい練習につながることも あるので頭に入れておこう。【スポーツ心理学(佐藤雅幸)】

●自分の心と向き合い、状況を客観的に判断することで感情に左右されにくくなる
 スポーツ心理学の立場から、まず心理状態がよくないときにメンタルトレーニングを行っても効果はないもの。例えば、試合に負けて落胆しているときに「ガンバレ」と 言ってもあまり効果はないのと同様、コロナで活動が制限されるとか、合宿や対外試合が思いっきりできないなど時というのは、アスリートも一般の人も不安なことが多く、 「ガンバレ」の言葉だけでなかなか頑張れるものではない。そのな時に大切なのは、まず自分の体や心と向き合うことだと思う。【スポーツ心理学(佐藤雅幸)】

 「できなくてもいい」?と思う人もいるだろうが、"うまくできなかった"というのも気づきの一つだからだ。繰り返す中でできるようになる可能性もあり、 客観的には、現状を受け入れる、ということが必要なのではないだろうか。"できない"ことでイライラするなどの感情を生むのも自分。受け入れることで楽になり、 そうした感情に左右されずにパフォーマンスが発揮できるということにもつながっていくのかなと思う。【インストラクター(露木めぐみ)】
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▽(後編)エクササイズに続く
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